客先常駐のSESやってますが、将来が不安です。
「SESはやめとけ」、「SESの将来性はない」などの記事を見ることが多いので不安になりますよね。
しかし「SESの将来性」では主語が大きすぎて本質をとらえていません。
SESの将来性がある局面とない局面があるからです。
この記事では、「SESという契約形態の将来性」、「SES企業の将来性」、「SESとして働くあなたの将来性」と分割してそれぞれ詳しく解説します。
そして、SES企業で長期間働くデメリットを24年間SES業界で働いてきた私がぶっちゃけ説明します。
本当に知りたかったSESの将来性を把握し、あなたのキャリアプランに役立ててください。
- ITエンジニア歴24年(現役)
- マネージャー兼システムアーキテクト
- 国家資格 FE・SW・SA・PM 保有
- 孫請けSES ⇒ SIer ⇒ 起業を目指し中
- 輝くエンジニアを増やしたい
X(twitter) : (@evolution_Avi)
SESとは労働力を提供して時間で精算する契約形態
SESとは、System Engineering Serviceの略称で、IT業界における契約形態を指します。
特定の業務に対してエンジニアの労働を提供する準委任契約のことをSES契約またはSESと呼び、
エンジニアの労働力提供を主としている企業をSES企業と呼んだりします。
SESはあくまで契約形態のため、元請け大手SIerがSESでエンジニアを派遣することだってあります。
よくネット上で「SESはやめとけ」や「SESに将来性はない」と言われるとき、多くの場合が階層が下のSES企業のことを指しています。
SESの将来性を考えるとき、まずはこの違いを理解しておくことが大事です。
SESの将来性は分けて考える
SESの意味を理解したところで、SESの将来性を「SESという契約形態」、「SES企業」、「SESで働くあなた」という3つの視点で将来性を解説していきます。
SESという契約形態の将来性
SES契約とは、エンジニアが労働力を提供して報酬をもらう契約のことで、準委任契約と同じ意味です。
契約の条件は様々ですが、例えば「140時間~180時間働いた場合、月額50万円支払います」という感じです。
委任契約のため、成果物の完成責任は問われません。あくまで労働時間により報酬が支払われます。
この準委任契約の企業側のメリットは、有期契約のため人員調整がしやすいということがあります。
例えば内部設計、製造、単体テスト工程の3か月間だけ、プログラマーを3人調達したいということが可能です。
社員は無期契約のため、柔軟に調整できません。
このようにSES契約とは、プロジェクトを遂行するために企業側にメリットがある契約形態のため、今後も使われるでしょう。
しかし、SES契約が今後もなくならないからといって、SES契約で働くことに将来性があるわけではありません。
SES企業の将来性
DX白書2023によると、日本においてITエンジニアの人材不足は依然として深刻な問題であることが明らかにされています。
IT人材の「量」に対する過不足感について、IT企業に尋ねた結果、80.2%が「大幅に不足している」または、「やや不足している」と回答しています。
また、経済産業省によるIT 人材需給に関する調査によると、2030年には最大79万人のIT人材が不足すると予測しています。
このように、IT人材は需要に対して供給が追いついていない状況のため、SES企業の将来性は明るいということが言えます。
SESとして働いているあなたの将来性
あなたが現在SES企業で働いているとして、将来のキャリアについて考えているなら、ここからが本題になります。
本音を語る前に、少し私の経歴を紹介させてください。
私は24歳のときに、他業種からSES企業に転職しました。
この会社は社員十数名の小規模な会社で全員がそれぞれの客先に常駐して働いていました。
給料は安かったですが、未経験からのエンジニア転職だったため、スキルをつけるためにがむしゃらに働きました。
しかし、社員の努力もむなしく3年後に会社は倒産し、2回目の転職をしました。
社員1,000人規模の中堅SIerです。
この2社目では大小さまざまなプロジェクトを経験し、PG→SE→PL→PMというキャリアアップを果たしました。
現在マネージャー兼システムアーキテクトとして現場をこなしつつ、SES企業から要員を調達しています。
人それぞれ望むキャリアは違いますので、一概に将来性を「ある」とか「ない」とか言えませんが、私の経験から本音を語りたいと思います。
結論からいうと、ITエンジニアとしての経験を積みたいとか、特定の技術スキルを上げたいという目的があり、期限付きでSES企業で働いていることは「あり」だと思います。
しかし、目的もなく何となく働いていたり、SES企業で出世を目標にがんばっている人の将来性は「ない」と思います。
SES企業(特に小規模)のメリットは未経験や経験が浅い人でも入りやすいということです。
しかも、運が良ければ(またはきちんと交渉すれば)爆速で成長できる環境で働くことができます。
しかし、3年以上の経験を積んで、技術スキルも付けたのに小規模なSES企業でがんばっている人をよく見ます。
私から見ると転職すれば年収は100万は軽く上がるのにと思うのです。
では、SES企業で長期間働くと、どのようなデメリットがあるのかを次の章で説明します。
SES企業で長期間働くデメリット
SES企業で長期間働くデメリットとして、以下が考えられます。
給料が上がりにくい
SES企業の収益モデルは利益率が低いです。
特に多重請負構造で階層が下がるほど低くなります。
例えば3次請けの場合。
上記の例でいくと、50万円から経費とエンジニアの給料を払いますので、会社の利益率は10%以下になることもあります。
社員数が多くなればなるほど、利益も積み上がりますが、その分非生産部隊(総務や経理の人員)を入れたり、勤怠管理システムなどのシステム投資が必要になります。
また、待機要員が出ると持ち出し(収入はないが、給料は支払わないといけない)になるため、稼働している社員の利益から補填します。
このような状況から、給料を上げる余裕がないことが多いです。
スキルアップしにくい
冒頭で述べたようにSES契約は「140時間~180時間働いた場合、月額50万円支払います」という労働時間清算型の契約のため、時間に制約があります。
社内研修などスキルアップの機会が少なく、休みも取りにくい傾向があります。
また、発注元企業は、プロジェクトが立ち上がった後にエンジニアを調達するため、SES企業のエンジニアはプロジェクトのピーク時に在籍することが多く、いつも忙しいです。
そのため残業が多くなりがちで、仕事以外で勉強する時間もなかなか取れません。
SES企業の中では社内研修に力を入れているところもありますし、しっかり休みを取れるところもありますが、割合は少ないでしょう。
キャリアアップしにくい
SES企業に正社員として入ったとしても、常駐先との契約は3か月や6か月の有期契約になります。
常駐先で要員が継続して必要であり、スキルがマッチしていたら、契約を更新していく形です。
逆にプロジェクトが終わったり、スキルアンマッチと見なされたら、「満了」といって契約終了になります。
このように案件を渡り歩いていくわけですが、必ずしも自分の希望どおりの案件に参画できるとは限りません。
会社の営業はできるだけ社員の希望に沿った案件を探しますが、完全に希望どおりの案件はなかなかありません。
空きがでないように、ある程度妥協して参画してほしいというのが本音でしょう。
よく案件ガチャと言われるように、運の要素が強いため、長期間のキャリアアップはしにくいと思います。
根気よく交渉し当たりを引くと爆速で成長できる環境もあります
客先常駐SESに将来性はあるか?SES歴24年エンジニアの本音まとめ
いかがだったでしょうか?
この記事では、SESの将来性をSESという契約形態、SES企業、SESで働くあなたと分割した上でSES業界で24年働く私の本音を話してきました。
結論を繰り返すと、ITエンジニアとしての経験を積みたいとか、特定の技術スキルを上げたいという目的があり、期限付きでSES企業で働くことは戦略的にありだと思いますが、目的もなく何となく働いていたり、SES企業で出世を目標にしている人の将来性はきびしいと思います。
変化の激しい現代では、自分のキャリアも柔軟に方向転換していかないといけません。
chatGPTなどの生成型AIが世の中に広まったことにより、エンジニアに求められるスキルも変化していきます。
その変化についていくには、働きながらも常に学習し自分を磨き続けないといけません。
あなたは自分のエンジニアとしての市場価値を把握していますでしょうか?
意外と自分でも気づいていない価値を持っているものです。
もし、あなたが現在SES企業で働いているとしたら、今の現場で働き続けることで、あなたの目指すキャリアに近づいているのかを考えてみてください。
SES企業である程度経験を積んだら、SESから社内SEに転職する道もあります。
キャリアアップを果たすためには環境が一番大事です。
短期的な将来性、長期的な将来性を見極めた上で、フレキシブルに行動していきましょう。
- ITエンジニア歴24年(現役)
- マネージャー兼システムアーキテクト
- 副業としてネットショップ運営
- ITエンジニアのスキルアップネタを発信
- 輝くエンジニアを増やしたい
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